
飼い主・獣医師対談 〜飼い主と獣医師、相互の信頼関係の作り方〜
現在、PetVoiceは疾患を持った愛犬愛猫と暮らすご家庭で多く活用されております。PetVoiceを利用されている方はもちろん、まだご使用ではない飼い主様も含めて、同じく闘病生活を送る飼い主様の心の支えになる情報を発信したいと考え、インタビューを実施しています。
今回は、愛犬蘭丸ちゃんの肺水腫の治療をきっかけにPetVoiceをご利用いただいているW様と、担当獣医師の村田先生にご協力いただいたインタビューの内容をご紹介いたします。
インタビューのポイント
飼い主と獣医師の両方の視点から闘病について教えていただきました。
今回のインタビューを通じて、愛犬の闘病を支える上での飼い主と獣医師の関係の大切さを感じました。愛犬愛猫の健康を守るために、日頃から情報収集や獣医師との対話を大切にすることが重要です。
村田先生・W様について
獣医師 村田直樹先生

日本獣医がん学会所属・JAHA認定総合臨床医
大田区蒲田のもりかわ動物病院に勤務しながら、週1程度で杉並区荻窪のグラース動物病院で診療業務を行なっています。
幼少期に猫を3匹飼っており、当時かかりつけだった獣医師が非常に熱心で猫の体調を的確に教えてくれたことが獣医師を志したきっかけです。
飼い主様(W様)
愛犬の蘭丸(2024年12月ご逝去)と福助と一緒に暮らしています。村田先生が勤務を開始される前からグラース動物病院に通っていました。蘭丸は2歳の時に成犬譲渡でお迎えしました。
自身の両親を看取るときに医療知識がなかったことをきっかけに、蘭丸に心雑音があると言われた時から心疾患とそれに関連する病気について知識を持とうと色々と調べました。

(左:福助ちゃん 右:蘭丸ちゃん)
W様には過去単独インタビューにもご協力いただきました。
単独インタビューは下記よりご覧いただけます。
インタビュー内容
闘病について
「蘭丸ちゃんの心臓病の闘病の経緯について教えてください。」
W様:蘭丸を2歳で迎えて、初めての健康診断からグラース動物病院でお世話になっています。
当時はまだ村田先生以外の先生にご担当いただいていました。
しかし、ある日突然前の担当医がやめてしまいました。もう1頭の愛犬の福助を最初に外来で見ていただいたのが村田先生で、そのまま蘭丸も診ていただくことになりました。
蘭丸はとにかく咳が出る子で気管虚脱だと言われていました。しかし、村田先生にご相談していると、この咳は気管虚脱由来ではなく、肺水腫であることを見つけてくださいました。
村田先生:もともと気管軟化症の疑いがあり、肺の音がおかしいと思いレントゲンを確認したら肺水腫が見つかりました。
W様:心臓病のステージB1の期間が長かったのですが、軽度の肺水腫が見つかり、そこから坂道を転げ落ちるかのように心臓病が急変してしまいました。

(闘病中の蘭丸ちゃんの様子)
獣医師と飼い主の関わり方
「村田先生はとても信頼のできる獣医師とのことですが、闘病中のどういった部分から村田先生は信頼のできる先生だと思われたのでしょうか?」
W様:蘭丸の咳がひどくて病院に通い、気管虚脱だと言われていました。しかし、ある日の診察時に喉以外の場所を触っても咳が出たので「これは違う、レントゲンをとった方がいいです」と言われて、レントゲンを撮ったら本当に白い影(肺の水)がありました。蘭丸の肺水腫を見つけていただいたのが信頼できると感じたきっかけです。
また、私は素人ですが、病気や投薬内容について調べて病院に行きます。素人考えのところも大いにあると思いますが、その素人考えに対して笑わずにしっかり聞いて回答をくれました。
最後に、うちの蘭丸は村田先生のことが大好きです。元々蘭丸は大人の男の人が怖かったのですが、診察台の上で村田先生にデレデレだったのがとても印象的でした。愛犬が嫌がらない先生は貴重です。蘭丸が通いやすい先生ということも信頼の一部になっています。

「村田先生が患者さん・飼い主さんと接する時に心がけていることは何かありますか?」
村田先生:やはり説明の仕方を心がけています。伝わらないと意味がないです。
病状が悪くなっていれば、獣医師であればある程度の診断はできますが、どう噛み砕いて説明し治療方針について納得していただくか、ここが飼い主さんとのコミュニケーションでは重要だと考えています。
例えば、余命宣告が必要なケースは仕事柄どうしても付き纏います。その上での治療方針を説明し、理解していただくか、納得していただくか、ここを一番注意し、重視しています。
「病院によっては説明をできるだけコンパクトにするように指導されている病院もあると思いますが、グラース動物病院ではどういった方針でしたか?」
村田先生:グラース動物病院は診察室もたくさんあり、獣医師1人に1つ診察室があります。当然、最低限のタイムマネジメントはしていましたが、動物病院の環境としても飼い主さんにしっかり説明し納得感を得ていただけるまでお話しする余裕はあったと振り返っています。
「W様は治療に熱心で知識も豊富、また行動力もあり、PetVoiceのデータ計測もしっかり続けていらっしゃいました。理解がある一方で、獣医師としては扱いづらい部分もあるかもしれません。こういった患者さんとの向き合う上で獣医師として心がけることはありますか?」
村田先生:私自身は扱いづらいとは感じませんでした。僕はむしろ飼い主さんが少し知識がある方がコミュニケーションが円滑だと感じています。
W様:看護師さんともコミュニケーションをよく取れていました。入院期間が長かった期間もあり、その時は行く度にその日の様子を看護師さんから聞いていました。
蘭丸が終末期に入ったタイミングで、村田先生はもりかわ動物病院がメインで、グラース動物病院は週1の勤務になりました。日曜日は村田先生と面談をして、他の獣医師の先生ともしっかりコミュニケーションを取っていました。グラース動物病院には10人くらい獣医師さんがいらっしゃいますが、夜間の先生も含めて全ての先生とお話をしていました。
蘭丸は院内ではみんな知ってくれていて、保定いらずで有名だったそうです。入院室が別荘みたいでした。全ての看護師さん・獣医師さんにとてもお世話になりました。感謝しかありません。


(病院での蘭丸ちゃんの様子)
「村田先生がこれまで振り返って飼い主さん・患者さんと信頼関係を構築する上で大切にしていることはありますか?」
村田先生:根底は寄り添えるかどうかだと感じています。病気として接するか、家族として接するか。接し方で言葉選びや説明の仕方も変わってくると考えています。この仕事は伝わらないと仕事になりません。
W様:村田先生が寄り添ってくれるなと感じた瞬間は、こちらのニーズをお伝えするとそれを打ち返してくれた時です。
蘭丸は腎臓病も併発していたので、幹細胞治療・再生医療をしたいと申し出ました。しかし、心臓が悪いのでやるべきではないと返答があり、少しだけ食い下がって、やってみたいとお伝えしたことがありました。
その時に、入院して点滴でゆっくり投与する方法であれば、実施できる可能性がないか一度持ち帰って確認すると仰ってくれました。私は頭ごなしに「できない」と言われると思っていたので、きちんと対案を持ってきてくれるというのは寄り添う姿勢だと強く感じました。できない時はできないだけで終わらすのではなくて、この治療方法はどうですかと必ず対案を出してくれます。
また、獣医療的には勧められる治療法だが、もし自分が飼い主だったらその治療を選択するかという2つの視点からお話をいただけたことは、私の中でも選択肢の幅が広がりました。
村田先生:獣医療的にはこうすべきという選択があっても、飼い主心理的には選択が難しいという局面はままあります。
理論と飼い主心理で正しさが別れる時のポリシーについて、明らかに健康寿命が伸びる時にはプッシュすることにしています。結果が悪い可能性も半々な場合は、負担についても提示した上でよくお話をして納得感を重視しながら選択をしていくようにしています。
「W様が今回蘭丸ちゃんとの闘病を経て考える、いい先生といい病院の選び方、巡り会い方について教えてください。」
W様:飼い主さんのご自宅の場所にもよると思いますが、私の自宅の周りには動物病院がたくさんありました。選択肢がたくさんある場合は、嫌だったら病院を変えてもいいと考えています。
動物病院に関する情報収集も大事で、情報を収集する手段をたくさん持っていることは本当に大切です。Google mapの口コミに頼らない情報収集がいかにできるか。犬を飼っている人であれば、お散歩中に他の飼い主さんと情報交換ができるし、病院の待合室でも同じような病気で来ている方と話すこともできます。
蘭丸はソフトランディング(終末期ではQoLを維持)を目指していました。僧帽弁の手術の提案もあったが、年齢のこともあり、手術代の数百万円を払うよりはQoLの維持のために毎月10万円を払う方がいいと伝えました。
病院や獣医師を選ぶ時、どんな治療をしたいのか? 積極的治療がしたいのか、それとも緩和ケア等QoL維持を目的にするのかを考えるようにしています。 積極的治療をするなら専門医のいる病院が選択肢になるでしょうし、QOL維持なら総合診療ができるホームドクターが良いことになります。 「どんな治療を」「どの病院で」「いつまでするのか」を飼い主が決めないといけないので、病気についての予備知識は大事だと思っています。
蘭丸については終末期はQoLを維持するという方針から、夜間も往診も対応してくださるグラース動物病院を選んでいました。


(お家での蘭丸ちゃんの様子)
最後に
愛犬の闘病を支えるうえで、飼い主と獣医師の信頼関係がいかに大切かを改めて感じるインタビューでした。
W様のように積極的に情報収集を行い、獣医師と対話を重ねることで、納得のいく治療を選択できることがわかります。
また、村田先生のお話からは、飼い主の気持ちに寄り添いながら最適な治療方針を一緒に考えることが、良い獣医療につながることが伝わってきました。
大切な家族のために、日頃から信頼できる先生や病院を見つけておくことが重要です。