犬の食物アレルギー ドッグフードから分かること
犬も人と同様に食べ物によるアレルギー反応を示すことがあります。どんな物質が原因でアレルギーが起こっているのでしょうか。その原因は今食べているフードにあるかもしれません。
犬の食物アレルギーとは
犬の食物アレルギーとは、食物または食品添加物に関連した免疫反応によって起こる皮膚症状や消化器症状を指します。年齢や品種、性差に関係なく発症すると言われていますが、犬の症例の30〜50%は1歳未満で発症しています。
食物アレルギーの症状
食物アレルギーの症状は、皮膚症状と消化器症状に大別されます。
皮膚症状とは、主にかゆみを伴う皮膚炎です。
痒くなりやすい場所としては
- 顔周り(目・口・耳周辺・外耳)
- 四肢
- 腰まわり(特に背中側)
- 皮膚が重なりやすいところ(脇の下・内股・肘の裏側・皮膚のシワ)
- 尻尾、陰部、肛門周囲
が挙げられます。皮膚炎が起こっている場所は、見た目に赤っぽい、ブツブツした出来物、痒がる、舐め壊す、掻きむしることによる脱毛や表皮の剥離などの症状が見られます。放置していると色素の沈着が起こったり、苔癬化(固くてゴツゴツした苔のような皮膚)してしまったりします。
また皮膚のバリアが弱ってしまうため、細菌感染による膿皮症やマラセチア皮膚炎、外耳炎を続発することがあります。
一方で、消化器症状としては良便、下痢問わず1日3回以上の排便がみられるのも特徴です。その他嘔吐などが認められます。また、食物アレルギーのこれらの症状は季節に関係なくみられます。
食物アレルギーの原因と診断法
食物に含まれているタンパク質が主な原因です。
特に大きな構造をしたタンパク質(高分子タンパク質)であることが多いです。
具体的には肉類(牛肉、鳥肉)、卵、大豆、乳製品、トウモロコシ、小麦などですが、その他のタンパク質や食品添加物に対してアレルギー反応を示す場合もあります。
またアレルゲンが複数ある場合も多いです。
診断には除去食試験と食物負荷試験を行っていくことが一般的です。
除去食試験では、症状が出ていたときに食べていたフードから考えられる原因を排除した除去食を2ヶ月間与えて、皮膚の症状が改善するかを確認します。改善が認められた場合、食物負荷試験を行います。食物負荷試験では、以前のフードを少しずつ与えて、症状が再び現れるか確認します。除去食試験では、蛋白質をできるだけ小さくしたフード(加水分解フード)や低アレルギー食、新奇タンパク質(なまずやカンガルー肉など少し珍しい原料を用いた)フードを与えます。
この他にも、血液を採取して血液に含まれるアレルゲンに反応する抗体の量を調べる血清中IgE抗体測定や、血液内の免疫細胞であるリンパ球がアレルゲンに反応するか調べるリンパ球反応検査があります。しかし、血液検査では、実際にはアレルゲンではないのにアレルゲンであるという結果が誤って出てしまうこともあるため、除去食試験に比べると補助的な検査と言えます。
食物アレルギーの治療法
除去食試験で特定したアレルゲンを排除した食事を与えていくことが主な治療です。
正しい食事管理を行えれば健康な犬と変わらない生活をおくることができます。
また、食物アレルギーをもつ犬は皮膚のバリアが壊れている場合が多く、表在性の膿皮症や、マラセチア皮膚炎などが続発している場合があります。これらは食物アレルギーの症状を2次的に悪化させるため、抗菌薬や抗真菌薬の投与や、皮膚を清潔に保つためにシャンプーなどを行う必要があります。
痒みがひどい場合は抗ヒスタミン剤やステロイド剤を投与する場合もありますが、類似したアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎に比べ、ステロイドへの反応性が乏しい場合が多いです。
そのため、やはり食事管理が重要だと言えるでしょう。
ご飯を変えてもすぐに治らないことを知っておく必要があります
皮膚が新しい皮膚に生まれ変わるまでには約1ヶ月かかると言われており、食事を変更しても効果が現れるまでに最低でも1ヶ月以上かかります。
また、アレルゲンが複数ある場合も多いため、アレルゲンの特定に時間がかかる場合があります。この場合、原因が特定できるまで根気強く除去食試験を続けることが必要です。
また、除去食試験をしている期間は、決められたフードだけを与える必要があります。ちょっとだけなら…とおやつをあげてしまうと、もし症状の改善がみられなかった場合に除去食の効果がなかったのか、除去食は効果があったけれどもおやつの影響によるものなのか、正しく判断できないためです。
まとめ
犬も人間と同様に食物アレルギーによる皮膚炎などを発症します。食物アレルギーからくる皮膚のかゆみや下痢は犬にとっても辛い症状です。食事管理や日々のケアを見直すことで、犬が健康な生活を送れるようにしましょう。