新機能発表会 皮膚専門医村山先生
PetVoiceでは、2024年11月11日に新機能発表会を行いました。新機能発表会では、新機能のご紹介だけでなく、今後注力していく分野についても発表しました。
この記事では、今後注力する分野の1つである「皮膚疾患でのPetVoice活用」について、犬と猫の皮膚科の院長を務める村山信雄先生よりお話いただいた内容をご紹介します。
村山信雄先生のご紹介
犬と猫の皮膚科の代表を務めていらっしゃる、アジア獣医皮膚科専門医という日本で数名しかいない皮膚の専門医の先生です。皮膚専門医として、犬と猫の皮膚科以外にも日本各地の動物病院で皮膚診療を行っていらっしゃいます。
発表内容
皮膚疾患の現状
皮膚疾患は、犬や猫の動物病院の受診件数として非常に多いです。アニコム社がまとめた統計によると、犬では罹患率1位から2位、猫では罹患率3位となっています。
皮膚疾患の特徴として、年齢を問わず発症する傾向があり、多くの飼い主様そして犬猫を悩ませている病気です。8割〜9割がかゆみを理由に受診していますが、かゆみというのは多くの飼い主様がイメージする「治る」ものではありません。
「治る」というのは、薬を使うことでかゆみが落ち着き、薬を使わなくて良くなるイメージを持たれると思いますが、獣医師にとっての「治る」とは薬を使うことでかゆみが落ち着くことを指します。つまり、皮膚疾患とは生涯にわたって付き合っていく必要があります。
かゆみを見分けることは難しい
治療を開始する時は、飼い主様から見て明らかにわかるほどかゆみがあります。ただ、治療が進んでいくと薬によってかゆみは落ち着いていきますから、現在の行動がかゆみなのか、生理的な掻き行動なのか判断が難しくなります。また、最近では夫婦共働きの家庭も多く、長い時間犬猫を観察することが難しいことから、留守番時間にかゆみがあるのか判断が難しいといった相談も多くあります。
病院でかゆみの強さを伝えることは難しい
動物病院では、よく犬や猫が感じているかゆみの強さを飼い主様に10段階で評価(PVAS:Pruritus Visual Analog Scale)してもらいます。10は眠れないくらいの強いかゆみがある状態、0は全くかゆみがない状態です。ただ、かゆみというのは本来自分自身にしかわからない自覚行動ですから、間に飼い主様が入って、客観的に犬や猫のかゆみの強さを評価するというのは大変難しいです。さらに、犬や猫のかゆみは寝る前や明け方に比較的強く出ます。明け方は飼い主様が寝ていることが多く、こういった理由からも客観的評価は難しくなります。
薬に対する抵抗感
かゆみの治療では、薬を用います。現在は副作用が少ないかゆみ止めもありますが、症状が軽くなれば薬の使用はやめたいという飼い主様も多くいらっしゃいます。しかし、前述したようにかゆみの評価は難しいため、どのタイミングでやめるのが適切か判断が難しい場合も多くあります。
かゆみの評価にPetVoiceが有効
PetVoiceで取得できるデータの1つに「毛繕い」があります。実は「毛繕い」がかゆみと相関があることがわかっていて、(計測精度は個体差があるとのことですが)およそ80〜90%程度の精度で相関が見られます。
以前、皮膚病を持った猫にPetVoiceを装着したところ次のようなデータが計測できました。
かゆみ止めとしてプレドニゾロンというステロイドを使用しました。プレドニゾロンは1日半は痒みを抑える効果があります。この猫の毛繕いのデータを見ると、薬を飲ませてから1日半の間は毛繕いが減っていて、その後増えていることがわかります。
多くの飼い主様はステロイドと聞くと嫌なイメージがあって、なるべく飲ませたくないという話をよくされます。こういったデータを見ることができると、どのタイミングで薬を飲ませたら良いのか、また薬をやめて良いタイミングも判断しやすくなります。
飼い主様が様子を見ることも重要
犬猫のかゆみを飼い主様が客観的に評価することは難しいとはいえ、様子を近くで見ておくことは非常に大事だと思っています。飼い主様から見て「かゆみがある」と思ったことについて、PetVoiceのデータと併せて確認できることで、飼い主様に納得感を持っていただきながら治療ができると考えています。
9軸でデータを取ることができるPetVoiceは、皮膚科の獣医師にとってセンセーショナルな道具になると予感しています。
PetVoiceとの今後の取り組み
PetVoiceデバイスをより信頼度高く、効果的に飼い主様と獣医療関係者に活用してもらえるよう、まずはPetVoiceアプリにPVASスコアを入力できるようにし、PetVoiceで記録する毛繕い時間との相関関係を見れるようにすることから開始する予定です。