猫が腎臓病になったらご飯はかえたほうがいいの?
腎臓病になった猫とできるだけ長く一緒にいるためにはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。特に食事は毎日食べるものだから気を使いたいですよね。今回は腎臓病の猫に必要な食事について解説します。
猫の慢性腎臓病にはなぜ療法食がいいのか
猫の慢性腎臓病には動物病院で腎臓病用に処方される療法食を食べることがベストです。
腎臓は体の中の老廃物を排出したり、生きていくために必要なミネラルの濃度を調整する重要な臓器です。慢性腎臓病ではこれらの排出・調整ができなくなるので、外から取り入れるもので調整してあげる必要があります。市販されている一般的なキャットフードはあくまでも健康体の猫のために設計されているため、こうしたフードの栄養組成は腎臓病にとって最適なものではありません。
猫の慢性腎臓病とは
腎臓は血液中の老廃物や水分、取りすぎた塩分(ミネラル)などを尿として濾して排出したり、反対に足りなくなった水分や塩分を尿から再び体の中に取り込んだりして体内の水分や塩分濃度を調節する臓器です。
慢性腎臓病とは長い経過の中で腎臓の機能が少しずつ失われていく病気のことを指します。
不要な老廃物が体に残り、必要な水分や塩分が捨てられてしまうことで様々な悪影響が出ます。
慢性腎臓病自体は猫特有の病気というわけではありませんが、猫は慢性腎臓病に非常にかかりやすく、10歳以上の猫の30~40%、15歳以上の猫の実に81%が慢性腎臓病を患っていると言われています。
さらに有効性が実証された予防法がないというのが実際のところです。
また壊れた腎臓の機能回復は難しいと言われています。
慢性腎臓病になって腎臓の機能の大半を失うと根本的な治療はできなくなるため、対症療法的に病気の進行を遅らせることしかできなくなります。そのためいち早く病気の兆候に気づき、治療を開始することが重要となります。
猫の慢性腎臓病で気をつけなければいけない栄養素は?
慢性腎臓病と診断されたら、進行を遅らせるための対策が重要です。
慢性腎臓病猫においてタンパク質やリン、ナトリウムは取りすぎるとよくありません。
タンパク質・リン・ナトリウムの量が制限されている食事に切り替えることにより、腎臓病にかかっている動物の生存期間が大幅に延長するという報告もあります。
また、腎臓では骨の形成を助けるビタミンDを活性化する働きや、老廃物を排出する働きがありますが、慢性腎臓病ではこの働きも失われます。そのため、ビタミンを添加したり、老廃物が出にくいように繊維を豊富に含む食事に変更したりする必要があります。
また、栄養素ではありませんが慢性腎臓病では脱水症状が起こりやすく、水をたくさん飲むことが大切です。
猫は元々あまり水を飲まない生き物であるため、飲水量を確保することは意外と難しいです。
水飲み場を増やす、新鮮な水に頻繁に交換する、水分を多く含むウエットフードに変更する等、意図的に猫が水を飲みやすい環境を作る必要があります。
療法食のいいところ
腎臓の仕事は体にとって必要なものをとっておき、いらないものを捨てるというものです。
このとき必要なものや不要なものの元になるのは食事です。
食事の成分の中には慢性腎臓病によって常に足りなくなってしまうものや、腎臓にダメージを与えてしまうものもあります。
こうしたことから食事は毎日食べるという点で薬と同じくらい必要な治療になります。
食事によって治療することを食事療法といいます。
この食事療法ができるのは動物病院で獣医師から処方される療法食だけです。
療法食とは、病気にあわせて栄養成分の量や比率が調整された、病気をもつ猫のための特別なキャットフードのことです。医薬品ではありませんが、通常、動物病院でしか買うことができません。
腎臓の状態や病気の進行度によっても猫に必要な栄養素が異なるからです。獣医師による診察を受け、獣医師に適切な食事を選んでもらうことが大切です。
慢性腎臓病の猫向けの療法食は数多く販売されており、栄養バランスを維持しながら病気の進行を抑えることが期待できます。
療法食というと美味しくない、バリエーションも少ない、といったネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし最近では腎臓病用の療法食は多くのラインナップがあり、フィッシュやチキン、粒の大きさ、ウエットやドライなどたくさんの種類の中から選べます。
ただ、療法食はあくまでも美味しさよりも健康を重視したフードです。どうしても猫によっては食いつきが良くないことがあります。そういう場合は元のフードに徐々に混ぜていくことで切り替えていくことをオススメしています。初日は1割ほど混ぜて、2~3日経過したら2割、3割と少しずつ変更していき、最終的に2週間から1ヶ月で完全に変更するという方法です。それでも上手くいかなければ種類やメーカーの変更も考えましょう。
食事療法は動物にとってストレスを感じる原因になることは確かです。また猫が食べてくれないということは飼い主さんにとっても精神的なストレスになります。獣医師に相談の上、食いつきが良くなる好物を少量トッピングするということも選択肢としては良いかもしれません。
手作り食が難しい理由
どうしても療法食を食べてくれないなどの理由から、手作りの食事を食べてもらいたいという場合は、(獣医学的にはあまりおすすめはできないものの)先述の通りタンパク質・リン・ナトリウムなどの量に注意する必要があります。
例えば、タンパク質を制限すると必要なカロリーを摂取するのに炭水化物や脂質が多く必要になり、結果的にバランスが悪くなったり、ミネラルが不足したりとかなり厳密な計算が必要になります。手作り食で1日に必要な栄養素とエネルギーをすべてカバーすることはほぼ不可能です。
やはりできるだけ療法食を中心とし、プラスでトッピング程度に猫の食いつきがいいものを与えるくらいがよいでしょう。
療法食を始めるタイミング
慢性腎臓病と診断されたらとりあえず療法食を食べさせておけばいいのかと言われると実はそうではありません。先述の通り病気の進行度によって制限したり、逆に追加したほうがいい栄養素は異なります。これらの判断はとても難しいので、自己判断での療法食の開始は避け、できる限り獣医師の処方のもと、療法食を購入するようにしてください。
まとめ
腎臓病になると体に不要な老廃物を排出できなくなるため、食事から取り入れる栄養素というのはとても重要になります。猫と少しでも長く一緒にいるために食事を見直してみるといいかもしれません。
参考文献