犬の下痢にサツマイモをあげても大丈夫?

サツマイモは食物繊維を豊富に含み、低脂肪であるため、犬の消化器の療法食にも用いられる食材です。犬が下痢をしている際にサツマイモを食べることで治ることがあります。一方でサツマイモをあげることで下痢が悪化する場合もあります。基本的には食物繊維の摂取を目的とするのであれば、ドッグフードで摂取することが推奨されますが、好き嫌いが多くてドライフードは食べてくれない子、季節のものを食べて欲しいなど、どうしてもサツマイモを愛犬に与えたいという場合は、サツマイモの栄養学的な特徴について理解しておく必要があります。

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犬の下痢がサツマイモによって治る理由と悪化する理由

サツマイモには食物繊維が多く含まれています。食物繊維は腸の運動性を刺激することで整腸作用がある他、水分を吸収することで便を固める作用があるため下痢をしている便を通常の状態に戻す働きもあります。
そのため下痢をしている犬に対してサツマイモを与えると下痢が良くなる可能性があります。一方で食物繊維は消化する際に胃腸に負担がかかるため、

  • 小腸が原因で下痢をしている場合
  • 子犬やシニア犬など消化機能が未熟、または衰えている犬に与えてしまった
  • 加熱せずに生の状態で与えてしまった
  • 皮ごと与えてしまった

といった原因で下痢を引き起こしたり、悪化させてしまうことがあります。
そのため獣医師の診断無しに、下痢になったからとりあえずサツマイモをあげるというのはあまりおすすめできません。

とはいえサツマイモには犬にとって魅力的な栄養価がたくさん含まれていることも事実です。
おやつやご褒美として少しづつあげるといいでしょう。

サツマイモを与えない方がいい犬

消化器官が未発達の子犬や、消化能力が低下しているシニア犬は、下痢や軟便を引き起こす可能性が高いため、サツマイモを与えるのは避けたほうがいいでしょう。

また、サツマイモは

  • 肥満傾向や糖尿病の犬
  • 腎臓や心臓に病気がある犬
  • 尿管結石になったことがある犬

は控えたほうがいいかもしれません。
サツマイモは高カロリーであるため効率良くエネルギーを補給できることが魅力ですが、カロリー管理が必要な肥満犬や糖尿病の犬には向きません。

また、サツマイモに多く含まれているカリウムは腎臓機能がうまくはたらいていないと排出されにくくなり、高カリウム血症になります。
高カリウム血症は不整脈を誘発する恐れがあるため、腎臓や心臓に障害のある犬は摂取を避けたほうがいいでしょう。

サツマイモに含まれるシュウ酸カルシウムは結石の原因になるので、結石ができやすい犬はやはり摂取を控えたほうがいいでしょう。

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適量を意識して与える

サツマイモをおやつとして与える場合気になるのはどの程度与えて良いかということです。
1日に与えるおやつの量の目安は1日に与えるべきフードの量の総カロリーの10%程度が目安とされています。

カロリーの計算方法ですが犬が何も活動しなくても消費するエネルギー量である、
安静時エネルギー要求量(PER)を求めて、その数値に成長や運動などを加味した個別の数値をかけた実際に1日に必要なエネルギー(DER)を求めます。

PER=70×(犬の体重) ^0.75
DER=PER×(状況による数値)

犬の状況 数値
離乳~4ヶ月
4ヶ月齢~成犬
未避妊/未去勢 1.8
避妊/去勢済み 1.6
肥満傾向 1.2~1.4

なので例えば10kgの避妊済み犬であれば
PER=70×10^ 0.75
=393kcal であり、ここに避妊済みであることを加味すると

DER=PER×1.6
=630kcal

となります。そのため630kcalの10%である63kcalはおやつで補っても良いことになります。

文部科学省の食品成分データベースによると、
蒸した皮なしサツマイモのカロリーは10gあたり13kcalのため

1日5gくらいが適切ということになります。

平均的なサツマイモが1本200g程度ですのでほんとに1欠片ですね。ただ、この計算は健康かつ若年から中年齢にかけての健康な犬の場合ですので、シニア犬や胃腸の機能に問題がある犬は、その都度考えて量を決定する必要があります。

サツマイモを与えるタイミング

サツマイモは食物繊維など犬にとって魅力的な栄養素が豊富に含まれています。そのためアレルギー等がない健常犬が適量食べることは問題ありません。

とはいえ食べ過ぎは良くないため、普段から与えることは避けた方がいいでしょう。

サツマイモを与えるおすすめのタイミングはやはり便秘がちのときです。食物繊維の効果で便秘の解消が期待できるでしょう。

反対に犬に元気がない時は胃腸の機能も低下している可能性があるため、消化の負担になるような大量の食物繊維を取るべきではありません。
このような場合はかかりつけの獣医師の指示を仰いで下さい。

下痢の原因をよく考えることが大切

以上のことから下痢の犬にサツマイモを与えることは基本的にあまりおすすめできません。
下痢の原因によっては治ることもありますが悪化させてしまう可能性も十分考えられます。下痢の場合は胃腸を休ませてあげることが一番であるため、消化に良いものを与えるよう心がけましょう。

まとめ

サツマイモには食物繊維や栄養素が多く含まれているため、成犬やアレルギーのないワンちゃんには、まとめて与えても問題はありません。

しかし、食べすぎや食べかたによって、または下痢の原因によってかえって下痢や軟便を引き起こしたり悪化させたりすることがあるため、与える量や調理方法には注意が必要です。犬の様子をよく観察しながら適量を意識して与えてみましょう。

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  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。

  • 監修者

    三橋和人
    株式会社PetVoice 獣医師

    麻布大学獣医学部にて獣医師資格を取得。獣医師として臨床を経験後、動物病院経由で販売される療法食最大シェアを誇るロイヤルカナンにてKOLマーケティングを担当。