犬が咳をする原因は?考えられる疾患と原因を解説

犬の咳を聞いたことがあるでしょうか。人と同様に一時的なものであれば問題ありませんが、続く場合にはなにか重要な病気が隠れている場合もあります。今回は、犬の咳について、原因となる現象や疾患について解説していきます。

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咳をする理由

犬が咳をする原因として主に

  • 生理的な要因
  • 呼吸器疾患
  • 循環器疾患

この3つが考えられます

咳というのはそもそも体に入った異物を追い出すための生理的な反応ですので、私たち人間も経験があるかもしれませんが、ホコリや煙、冷たい空気など気道を刺激する物質を吸い込んだ結果、それを取り除こうとしてしている反応である場合があります。

また咳反射と言われるものですが、気道を圧迫された場合も咳が起こります。わかりやすいのは首輪に繋がれたリードを何かの拍子で急に引っ張ってしまったときなどです。この場合も気道を急に圧迫されるため乾いたような咳が出ます。

他にも興奮して吠えた後に出る場合もあります(急に大きな声を出した時咳き込んだという経験がある方も多いと思います。)

このような咳は通常一時的なものであるためそこまで心配する必要はありません。

しかし呼吸器、もしくは循環器が原因の咳は一時的ではなく治療しないと咳が出続けます。
そのため咳が長引いている場合は次に紹介する病気を疑い、早めに動物病院を受診しましょう。

こんな症状が見られたらすぐに病院へ

犬の咳は乾性の咳と湿性の咳に分けられます。
乾性の咳は気道の軽度の炎症や圧迫などの刺激によって引き起こされる咳です。
気道内に分泌物がほとんど含まれないため「ケッケッケッ」のような乾いた咳が特徴的です。
乾性の咳は生理的な反応としてもしばしば認められ、長く続かなければそこまで重篤なものではありません。

一方で湿性の咳は気道内に多量の分泌物が存在するため「ゴホッゲッ」のような痰が絡んだ咳が認められます。湿性の咳は重篤な呼吸器疾患や心不全の際に認められる咳であるため、早急な対応が必要になります。

咳の原因となる疾患

それでは咳の原因となる疾患についてみていきましょう。

犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

ウイルスや細菌が単独、または複合感染することで引き起こされる呼吸器疾患です。
症状としては乾性の咳、微熱、水っぽい鼻水などですが、咳をしている時以外は健康そのものであるため、見落とされやすいです。
原因となるウイルスや細菌のほとんどがワクチン接種によって予防できる上、適切な治療を行えば大抵の場合1週間ほどで良くなっていく疾患とされています。しかし極稀に湿性の咳を伴う重篤な気管支肺炎に進行する場合もあります。咳が出ているときに食欲や元気が急激に落ちたときは注意が必要です。

気管虚脱

空気の通り道である気管が本来の形状を保てなくなり、潰れてしまう病気です。
肥満や老化、ケンネルコフや慢性気管支炎などの炎症、遺伝等が原因と考えられていますが正確な発症メカニズムはよくわかっていません。
しかしヨークシャーテリア、ポメラニアン、マルチーズなどの小型犬やペキニーズ、パグ、フレンチブルドッグなどの短頭種に多いとされています。

主な症状は軽症では気道が狭くなることで出る乾性の咳や「ガーガー」という呼吸音、痰を出そうとする吐き気のような症状です。進行するとひどい呼吸困難から失神やチアノーゼを示します。

肺炎

肺炎は細菌やウイルス、その他逆流した胃液や薬品などの刺激物によって肺が炎症を起こしてしまう病気です。
肺炎は主に細菌やウイルスによる感染性のものと、異物や自分の唾液、吐瀉物が気道に入ってしまい起こる、誤嚥性肺炎の2つに分けられます。
どちらも湿性の咳と頻呼吸、発熱や元気・食欲不振、チアノーゼ等が主な症状です。肺が炎症をおこすと、肺に水が溜まってしまい呼吸困難に陥るため早急な対応が必要になります。

心臓病

心臓病では心臓に掛かる負荷によって心臓が大きくなっていくため、心臓のすぐ真上を走っている気管が心臓に押し上げられ、潰されてしまいます。その結果心臓病の初期は気管が圧迫されることによって引き起こされる乾性の咳がみられることが多いです。
心臓病が進行した結果、心不全と呼ばれる全身に必要な量の血液を送り出せなくなる状態になると、心臓に血液が渋滞し、肺に流れた血液が心臓に戻れなくなります。戻れなくなった血液の液体成分は肺から染み出してしまうため、肺が水浸しになる肺水腫という状態になります。
この際湿性の咳が認められます。

犬の心臓病で最も多いのは、高齢の小型犬で特によくみられる僧帽弁閉鎖不全症です。

その他にも肺高血圧症や先天性心疾患、フィラリア症など様々な病気があります。

受診時は咳の様子を動画に記録

咳の仕方や頻度などを見ることである程度疾患を予測できる場合があります。
しかしケンネルコフのように咳が常には出ない疾患もあります。
そのため動物病院に受診する前に、咳の様子を撮影してから受診すると診断がスムーズになる場合があります。獣医師への説明もしやすいのでおすすめです。

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まとめ

犬の咳の原因は様々です。
一時的なものであれば危険性は低いのですが、長引く場合、呼吸器や循環器の疾患の影響である場合が高いため、命にかかわる場合もあります。そのため日頃から犬の様子をよく観察し、少しでも咳が続いていると感じたら軽い症状でも早めに動物病院を受診しましょう。

  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。

  • 監修者

    三橋和人
    株式会社PetVoice 獣医師

    麻布大学獣医学部にて獣医師資格を取得。獣医師として臨床を経験後、動物病院経由で販売される療法食最大シェアを誇るロイヤルカナンにてKOLマーケティングを担当。