猫が下痢をしたときに気をつけること
下痢をしたとき猫の体には何が起こっているのでしょうか。様子を見てもいいものもあれば緊急性を要するものもあります。また猫特有の疾患があることも忘れてはいけません。
下痢は大きく分けると2種類
下痢は糞便中の水分量が異常に増加し、流動性が増した症状を指します。
猫の下痢はその異常の原因が小腸か大腸かによって大きく2つの種類があります。また糞便時に含まれる水分量によって軟便、泥状便、水様便などに区別されます。
小腸性下痢:
回数は増加しないことが多いですが1回の排便量が増加するという特徴があります。便の形状は水様便から軟便まで様々ですが、未消化物や便が白っぽくなる脂肪便が認められることもあります。下痢が慢性化すると食欲不振や体重減少、嘔吐が認められ、重症化するおそれがあります。
特に便が黒っぽい場合は小腸で大量の出血がある可能性があり、命にかかわる場合があります。
大腸性下痢:
粘液が混じった軟便が多く、通常未消化物等は認められません。
最大の特徴は排便回数が増加することです。特に猫では便をしたくても便が出にくい、または痛いなどの理由から便が出したくても出ない「しぶり」が起きる場合があります。体重減少や食欲不振は通常は起こりません。小腸と違い、大腸で出血した際は明るい色の血便(鮮血便)が出ることがあります。
猫の下痢の原因は?
ストレスによる下痢
ヒトと同様に猫もストレスによって下痢になることがあります。引っ越しや、新しいペットを迎えるなどの生活環境の変化や、猫によっては来客や部屋の模様替えなどがストレスとなり下痢になることがあります。
異物の誤飲・誤食が原因の下痢
飼い主様のお薬や殺虫剤、玉ねぎなどの中毒物質や紐などの異物を誤飲して起こる下痢です。
いずれも猫の手が届かない場所(鍵のかかる棚等)に片付けて置くことで防ぐことができます。
特に1度誤食すると誤食が癖になってしまう子が多いので注意が必要です。
食事による下痢
食べた食事の内容や量等に関連した下痢です
・消化・吸収不良による下痢
消化管の働きが悪くなっている時に起こりやすい下痢です。
主に食べ過ぎや、冷たいものを食べた時、フードの劣化、フードの種類が急に変わったときに見られることが多いです。
特に缶詰などのウエットタイプのフードを与えている場合は、傷みやすいため冷蔵庫で保管している飼い主さんも多いと思います。そのまま与えると冷たすぎるため、電子レンジで湯気が出ない程度に数秒加熱してから与えると良いでしょう。少し温めることで香りも強まるため、食欲も促進されます。
またドライフードに多いのですが、開封後数ヶ月経つと表面の油分が酸化してしまいます。
酸化によって動物の嗜好性が落ちるだけでなく、酸化した脂肪分は吸収される際に腸や膵臓に負担をかけるため下痢や嘔吐を引き起こしやすくなります。
2週間から長くても1ヶ月程度で食べ切れる量を購入するようにし、遮光、密閉できる容器で温度の低いところに保存するなどしましょう。
・食物アレルギーによる下痢
人間や犬と同様に猫でも食物アレルギーによって下痢が引き起こされる場合があります。
感染症による下痢
ウイルスや細菌、寄生虫などによって起こる急性・慢性の胃腸炎による下痢です。
・ウイルス性下痢
代表的なウイルス性感染症は、パルボウイルスを原因とする猫凡白血球減少症やコロナウイルス感染症を原因とする猫伝染性腹膜炎などです。前者は猫の混合ワクチンによって予防できる病気で、後者は完全室内飼育を心がけることである程度予防できる病気です。
・細菌性下痢
細菌を原因とする感染症にはサルモネラ菌とカンピロバクター菌が原因となるものが代表的です。
どちらの菌も猫の腸内に常在している菌であるため、症状が発症することは稀ですが、ストレスやその他の病気で免疫が低下しているときに発症し、特に若齢猫では重症化する場合があります。
・寄生虫
コクシジウムや線虫、条虫などの寄生虫によっても下痢を起こします。
お家の外での感染もありますが、母猫のお腹にいるときに胎盤を介して感染したり、母乳によっても感染する寄生虫もいます。そのため外に出していないからといって感染していないとは限りません。
特に子猫を迎えたばかりのときは注意してみてあげましょう。
その他内臓・内分泌疾患による下痢
・内臓疾患による下痢
肝臓や膵臓に異常が起こっている時に下痢や嘔吐、元気・食欲不振が引き起こされる場合があります。
特に猫特有の疾患としては肝リピドーシスと胆管肝炎です。
肝リピドーシスは様々な原因で脂質の代謝が阻害された結果、肝臓に脂肪が異常に蓄積されてしまい、体重減少や下痢、嘔吐、元気喪失などが認められます。過度の肥満や、反対に長期間の絶食によって引き起こされることが多いので食事管理を徹底し、自己判断による絶食は絶対に控えてください。
胆管肝炎は細菌感染などによって胆道が閉塞してしまい起こることが多い病気です。
急な発熱や脱水、下痢、嘔吐、黄疸などがみとめられることがあります。
この他にも膵炎等によって下痢が引き起こされる場合もあります。
・内分泌系の異常による下痢
老齢猫に発症が多い甲状腺機能亢進症などでは下痢の症状が認められることがあります。
下痢以外の症状は?
下痢以外にも嘔吐や血便がある場合は早急に動物病院を受診してください。またこれらの症状がなくても数日に渡る下痢、便の回数が多い、食欲・元気がない、いつもより尿量が少ないなどの症状がある場合は動物病院への受診を検討するべきです。
脱水を引き起こしたり、電解質のバランスが崩れて重篤な状態に陥る場合があるからです。また、食欲不振が続く場合は肝リピドーシスに陥ることがあり危険です。
お家でできること、OKとNG
・下痢のときにご飯をあげていいの?
嘔吐がなく、食欲が低下していない場合は基本的に普段与えているフードをふやかしたり、ウェットフードなど消化のいいものに変更してあげましょう。腸粘膜は食べ物が腸管内に入ってこないと再生されなくなってしまいます。下痢の時でも食事を摂り続けることが大切です。
消化器疾患用の療法食も販売されているのでそちらに変更してみるのも一つの手です。
ただし消化器用の療法食でも猫の好みに合わず食べてくれなくなったりアレルギーなどによって下痢が悪化することがあります。変更する前にかかりつけの獣医師と相談してみましょう。
また下痢によって脱水状態に陥らないようにこまめな水分補給は必要です。
・絶食していいのか
自己判断での絶食はよくありません。猫は絶食時間が長くなると先述した通り肝臓に脂肪が溜まってしまう肝リピドーシスという病気になってしまいます。
・人用の薬を使ってよいか。
これもやってはいけません。人用の薬は人の体重や代謝に合わせて作られているため多くの場合猫にとっては過剰な量になってしまいます。また猫の体で代謝できない物質が含まれている場合もあります。猫に薬をあげる時は動物病院で処方されたものだけを与えるようにしましょう。
長引くときは早めに動物病院へ
下痢は最もよく起きる症状の1つですが、適切な処置によって改善しやすい症状でもあります。
長引くことで猫の体力は消耗し、また別の疾患の原因にもなるため、早めに対処してあげることが重要です。
まとめ
猫の下痢の殆どは一過性ですが重篤な症状が隠れている場合もあり、注意が必要です。
少しでも長引くようでしたら早めに動物病院への受診を検討しましょう。
普段から猫のうんちをよく観察し異変に早く気づいてあげることが重要です。