犬ニキビダニ症ってどんな病気?

犬ニキビダニ症は犬の毛穴に常在するニキビダニが過剰に増えてしまった結果起こる病気です。犬の皮膚疾患の中でもとてもメジャーな感染症ですが、気づかないうちに重症化してしまうこともある怖い病気です。

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発症するタイミングが特徴的

犬ニキビダニは健康な犬の毛包内にも普通に寄生しています。
そのため犬ニキビダニが過剰に増殖してしまうときは、犬の免疫が落ちているタイミングであることがほとんどです。発症したタイミングが若齢(1歳未満)である場合は若齢発症型、中年齢以降(特に10歳齢以上の高齢)で発症した場合は成年発症型と呼ばれています。
若齢発症型の場合は栄養失調や発情、その他ストレスなどが原因で免疫が低下したときに発症すると考えられています。
一方で成年発症型の場合は内分泌疾患(甲状腺や副腎の機能低下によるホルモンバランスの異常)や腫瘍、及びこれらの治療のための抗がん剤や免疫抑制剤などの影響や単純な老化によって免疫が低下した際に起こるとされています。

症状がとても多彩

毛穴に多数の犬ニキビダニが寄生した結果、皮膚が炎症を起こすため、皮膚が赤みを帯びたり、フケっぽくなる、また毛穴を中心に赤く盛り上がったようになる丘疹や、脱毛を伴った痒みや痛みがみられます。
ニキビダニがより皮膚の深くまで寄生し、表皮の下の真皮に到達すると毛穴から出血し、そのまま潰瘍になってしまったり、ここから皮膚の常在菌が感染し、膿皮症になってしまうこともあります。

診断方法は?

犬ニキビダニは毛穴の中に住んでいるため、症状が出ている皮膚の毛を採取して顕微鏡で観察する毛検査や、皮膚を専用の器具で削り、それを顕微鏡で観察する皮膚掻爬試験を行うことで犬ニキビダニを検出し、診断を下します。
特に高齢犬はホルモンバランスの異常が背景にある場合もあるため、血液検査などで内分泌疾患の有無も検査する必要があります。

治療法は?

駆虫薬の投与

犬ニキビダニに関して有効な駆虫薬であるイベルメクチンやミルベマイシン、ドラメクチンが開発されているためこれらを内服または注射することで駆虫を行います。
再発を防止するために長期の投薬が必要であることが多く、治療が1ヶ月以上続くこともあります。
最近では3ヶ月に1回の内服でノミ・マダニの予防・駆虫ができるフルララネル製剤にも、犬ニキビダニに対する効果があることがわかってきています。
細菌感染が認められる場合は抗菌薬の投与も行います。

シャンプー

犬ニキビダニは犬の皮脂やフケといった毛穴につまった汚れを栄養にするため、頻繁にシャンプーを行い、毛穴や皮膚を清潔に保つことが必要です。
慢性化すると皮膚を守るために余計に皮膚が油っこくなります。これが原因で悪化したり悪臭の原因にもなるため、こまめにケアしてあげることが大切です。

基礎疾患の治療

原因となる別の疾患が潜んでいることが考えられるので、これらの特定と治療も重要です。

栄養管理

若齢犬の場合に多いのですが栄養失調が原因の場合は栄養バランスの取れた良質な食事を与えることで免疫力や皮膚の健康を改善する必要があります。また油分が少ない食事に変えてみるのもいいかもしれません。

放置すると大変なことに

先述したとおり免疫が低下している状態であるため、犬ニキビダニが深部に寄生することによって皮膚のバリアを壊されてしまうと、皮膚に常在している細菌が非常に感染し易い状況になってしまい、一気に重篤化します。感染部位が膿んでしまったりかさぶたができてしまったり、痒みがひどくなってしまいます。
この場合は犬ニキビダニの治療だけでなく細菌感染に対する治療も必要になってきます。

診断が難しい病気です

犬ニキビダニ症は様々な症状が皮膚に起こってしまいますがどれも犬ニキビダニ特有の症状ではないため見た目では判断が付きません。
また犬二キビダニが毛穴の奥深くに寄生している場合、虫体が検出できない場合もあります。
特に若年発症型の場合、アトピー性皮膚炎の発症時期とほぼ同時期のため、より診断が難しく、アトピー性皮膚炎と誤って診断されてしまうこともあるようです。

まとめ

ニキビダニ症は健康な犬にも常在しているため通常は問題にならず、犬のメジャーな皮膚病であるため、適切な診断と治療を受けることで十分な改善が期待できる病気です。そのため過度な心配は不要ですが、免疫の低下が背景にあることをしっかりと理解し、犬の免疫が落ちないような栄養管理やストレスの少ない生活を送らせてあげる必要があります。また内分泌疾患などの基礎疾患を持っている高齢犬の場合は犬ニキビダニ症を併発しやすいことを理解しておく必要があります。

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  • 執筆者

    PetVoiceBlog編集部

    PetVoice編集部は獣医学や動物行動学を学んだスタッフが犬・猫の健康に関する情報をお伝えします。